尊厳を守ること。これは介護をするとき気をつけなければならないことの1つです。20年、30年ほど前は、認知症を患ってしまった高齢者や一人で動くことがままならない高齢者に対する介護は、知識の乏しさもあり非人間的なものが多いものでした。このような高齢者はぼけてしまっていて周囲のことが認識することができないと考えられていたため、物のように扱われることも多々あったようです。その状況を受け、2005年の介護保険法の改定では、尊厳の保持が明確化されました。

高齢者の尊厳を大切にするとは、介護を受ける側である高齢者は、それまで社会の一員として活躍し、社会活動を行ってきた一個人であると認識するということです。高齢者となり、介護が必要となっている人に対して、できなくなったことだけを目にして対応していくのではなく、介護を受ける人が介護を受ける前から変わらずに持ち続けてきた本質的な人格を見つめ、その時々に必要となる介護や医療を提供していくというスタイルをとることが必要となります。介護を必要とする人を、必要以上に子ども扱いすることもなく、その人が望む介護を提供することが尊厳を大切にした介護といえるでしょう。

尊厳を大切にした介護は、様々な意味で重要であり、必要です。倫理的な側面でも重要なことではありますが、尊厳を無視した介護を行うと、介護を受ける高齢者は強いストレスに見舞われ、かえって介護状況が悪化しかねません。状況を悪化させないためにも、尊厳の保持は重要なのです。